こんにちは、ハチコ(@hachiko8531)です。
今年の3月に書店に行ったとき、村上春樹さんの6年ぶりの新作長編(書き下ろし)の告知ポスターが貼ってありました。
『街とその不確かな壁』です。
これは私に読むべきだというお告げなんだ、
義務感じゃないけど、絶対読もうと思った。
なぜそう思ったかは…直感です♪(`・ω・´)ゞ
とにかくこの本を読まなければ年が越せない(いや、まだそのとき3月やろ)って、そのとき思ったんです。(こんな大げさに書いてるけど、熱狂的なハルキストではないのであしからず)
で、今から読書感想文を書いていこうと思う。
あまりネタバレはしないように留意していくけど、少しも内容知りたくないって人は回れ右してブラウザバックしてほしい。(本の中の気に入ったフレーズもいくつか書いていくから)
で、この本を読み終わった後、また戻ってきて私と語り合おう。
さて、それでは書いていく。
ブルーベリーマフィンを明日買いに行きたい。ブルーベリーマフィンが食べたいブルーベリーマフィンが食べたい。(←パンケーキ食べたいのテンションで言う)
…取り乱しました、もうね、ブルーベリーマフィンテロなの、この本は。
この本のタイトルは『街とその不確かな壁』
表紙は、黒のバックに白色の明朝体。
何やら不穏な空気が漂う。
私が中学生なら、国語のノートの表紙に「街とその不確かな壁」と美術の授業で習ったばかりのレタリングの明朝体で書くであろう。(厨二病かよ)
本書は三部構成となっている。
第一部、高校生のときに知り合った「ぼく」と「きみ」の淡い恋の話と、彼女がこしらえた架空の街とその中にある図書館の話。
第二部、ぼくは東京での職を辞して、田舎の図書館の館長になる。
第三部、ちよっとここではまだ言えません。(ぜひ読んでみてほしい)
第一部、ぼくもきみも、本好きで学生であるということから、『耳をすませば』の月島雫と天沢聖司を彷彿とさせる。
途中まであまりにも自然で気がつかなかったのだけど、主人公(ぼく)ときみには名前がなかった。第二章から登場するイエローサブマリンの少年(M**)にも名前らしい名前はない。
それが私には何か意味があるように思えて仕方がない。
主要な人物にも関わらず名前を持たないのはなぜだろう。
それとも名前なんて特に意味のないものなのかもしれない。
ただの人と人を分類する記号というわけか。
ぼくときみは公園で逢瀬を重ねて(唇も重ねる)のだけど、それ以上の関係には進まない。
「ぼくは、きみと話してるだけで十分幸せだ」なーんて言っちゃってるけど、またまたぁ、自分の気持ちに正直になれよ、と私は思ったりする。彼女は彼女で、「あなたとなら一つになってもいい。でも、今じゃない」って焦らしてるんだからぁ!!小悪魔が!!って思いました。
(ちなみに本書は珍しく直接的な性描写は出てきません。村上春樹さんどうしたの?心の繋がりみたいなのに重きを置くことに変えたのかな)
ぼくの意思とぼくの性欲は、それぞれ異なった地図を手に、べつべつの方向に進んでいくみたいだ p68
この文章が好きです。
サラッと読んだだけでは、どゆことて感じなんですが、なんかもうね、地図に例えちゃうあたりロックオンされてしまう。
第一部の途中まで何がなんだかよくわからないまま話は進みます。(まだおもしろさがわからなかった)
頭に皿を乗せているときには、空を見上げない方がいいってことさ p81
これは暗喩ですね。
比喩がいたるところに登場しているんですが、中毒性があるなぁと感じずにはいられない。
100ページ超えたあたりから展開がおもしろくなり、第二部に入るともう抜け出せない世界観。
あとがきを除くと655ページあり、結構なボリューム量である。でも、村上春樹さんの圧倒的な文章力がそれを感じさせない。
軽やかな文章ではないが、
穏やかに、ゆっくりと進むのが、心地よい。
あっという間の655ページであった。
もうね、次に何を仕掛けてくるんだろう、ってワクワクしてくる。一部難解な単語もあるけれど、総じて読みやすい文章だと私は思う。
第一部の中でも数字が振られ、1〜26に分かれている。
段落ごとに分かれてるから、細切れの時間にも読みやすい。(一段落は10分くらいで読めた)
とはいえ、この本は一気読みしたほうが絶対にいいと思う。
できればこの本読むためだけの旅をして。
そう、目的もない、本を読む旅。
ジーパンのポケットに文庫本一冊だけ持って、電車の旅なんてすごくいい。
(あ、当然ながら発売されたばかりの新刊のハードカバーの単行本で、まだ文庫本化しておりません…この本ポケットに入れたら、はち切れて破れてしまう)
本書の特徴、描写がイチイチ細かすぎる。(好き!)
それゆえ、読者が想像力を掻き立てて、それを頭の中で持続させながら本を読み進めてほしい。
本の中にトリップできたら最高だと思う。
そのためには、途中で本にしおりを挟んで現実に戻るのは実にもったいないと思う。
(まぁ、実際はそうはいかないのを重々承知)
第一章で、きみが想像の中で作った、壁に囲まれた街にある図書館の話をぼくにしてくれるんです。
ぼくは、きみが、こしらえた空想の図書館で「夢読み」の職に就きます。
(これが現実のできごとなのか、彼の妄想なのかは定かではない)
第二部では、ぼくは“実際に”東京での職を辞して、福島の図書館の館長の仕事に就く。
(先ほどの空想の図書館とは別の話)
はい、ここからどんどんおもしろくなっていきます!!
ファンタジー?パラレルワールド?
冗長的な村上春樹節が徐々に心地よくなってきましたね!
第二部に新たに登場する人物の2人がとても好きだ。
前図書館長の子易(こやす)さん、職員の秘書の女性、添田(そえだ)さん。
子易さんは、後にぼくのメンターとなる人物である。
以下に好きな文章を羅列していく。
ひとつには、こうしてスカートをはいておりますと、ああ、なんだか自分は美しい詩の数行になった気がするからです。 p232
どうだろう?恋愛というのは医療保険の効かない精神病のことだ、と言ったのは誰だっけ。 p240
涙も血液と同じように、温もりのある身体から絞り出されたものなのだ。p364
どうしてこんな表現が思いつくんだろう。
サラッと一読するのはもったいない、噛み締めて読みたい文章だ。
そして沸騰した湯を落ち着かせるべく、器用な手つきでそれを宙でくるくると回した。 p284
ここ紅茶を入れる場面なんですがね、特に好きな文章。
情景を思い浮かべると楽しくなる。
第三部は600ページから。
ああ、あと50ページ弱でこの物語は終わってしまう、と寂しくなる。
それからはあっと言うにラストまでいく。
ところで、ぼくが作るご飯はおいしそう。
それに、喫茶店のコーヒーやブルーベリーマフィンもおいしそう。
さてさて、壁に囲まれた空想(もはや現実と虚構の狭間が交じり合って、空想と言っていのかわからない)の街、そこにある図書館、「夢読み」とはなんなのか、至極具代的に書いてあるにもかかわらず、最後までよく分からない。
ジブリの世界のようで私は好きなのだけど。
本書は2020年の「コロナウイルス」の年に本格的に書き進められたそうだ。(あとがきに記載あり)
この街は
人々はすれ違っても話したりはしない、
昼夜問わず薄暗い、
それがコロナ時代と通じるものがある。
2020年、コロナウイルスの脅威で、とにかく世界が不安だった。
壁に囲まれて、疫病を排除した平和な世界がこの街なのかもしれない。
今いる現実の世界って、生きるのが辛い人もいると思う。
元気そうに見えるひとだって、心がポキっと折れることもしばしばだから。
そんなとき、この本を思い出したら、どうだろう。ユートピアはここ(この街)にあると思うだろうか。
逆にやっぱり現実のほうがいいって思うかもしれない。
もう一つ思ったこと。
自分の信じるものをすすめ!
道しるべはあっても、決めるのは自分。
ところで主人公が耳噛まれたエピソード、あれなんなん…猟奇的すぎるぜ、村上さんよ……。
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